ヘルツォーク&ド・ムーロンの手によって発電所から現代美術館へと蘇ったテート・モダンは、2000年に開館した。地上階にはタービン・ホールと呼ばれる吹き抜けの空間があり、そこに毎年ひとりのアーティストが作品を提供している。「ユニリーヴァ・シリーズ」という展示だ。このシリーズは、オラファー・エリアソンの「ザ・ウェザー・プロジェクト」、アイ・ウェイウェイの「ひまわりの種」など、現代アートの最先端のスペクタクルを提供してきた。そのシリーズの最初の展示が、ルイーズ・ブルジョワの「I do I undo I redo」だった。テート・モダンの開館とともに展示されたこの作品は、現代アート史にとって、記念碑的作品だったと言ってよい。
南フランスの極めて洗練された施設に突拍子もなく置かれたこの巨大な作品は、異物に見える。それはまるで工事現場のようだ。それも、人のいない工事現場だ。建設することを放棄された、完成することのない構築物。この作品のタイトル、「I do I undo I redo」に込められた意味は、未完成の、仕掛かり中の、何度も何度も作り直される創作というところにあるのかもしれない。鈍くくすぶるかのような三つのタワー。作られ、こわされ、再び作られる、作品は常にその行ったり来たりの過程のうちにある。完成を目掛けて制作されるというよりは、むしろ能動的な破壊と、そこから再び見出される創造、その絶え間ない行き来のうちに。
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